大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(う)1263号 判決

被告人 原厚香 外一名

〔抄 録〕

所論に鑑み検討するに、李定宇が、丸誠工業有限会社の当座勘定取引開始の名目で、株式会社常磐相互銀行渋谷支店から小切手用紙及び約束手形用紙各一冊の交付を受けるに当り、各実費を支払っていることは、所論指摘のとおりであるが、真実を告知するにおいては、たとえ相当対価を提供しても、相手方が財物を交付しないような場合に、あえて真実に反する事実を告知して相手方を錯誤におとしいれ財物の交付を受けた以上、詐欺罪は成立し、授受された対価が相当であることは同罪の成立を妨げないものであると解すべきであるから(昭和一七年二月二日大審院第一刑事部判決・刑集二一巻七七頁、昭和四〇年四月一四日東京高裁第五刑事部判決・東高刑特報一六巻四号八四頁参照)、本件統一手形用紙及び、同小切手用紙の喪失により、右相互銀行に財産上の損害が発生したものというべく、本件手形用紙及び小切手用紙を詐欺罪により生じた賍物と認定している原判決には、所論の事実誤認のかどはなく、論旨は理由がない。

(木梨 時国 奥村)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!